こういう写真、例えば一人のモデルで二役を演じるような作品ををつくる場合、最初から設定を決めてコスチュームを選び、ポージングや立ち位置、背景にもこだわってつくるのが当然だと思われる。
しかし、撮影時にそんなことは一切考えておらず、ただ樋口謙悟の魅力を切りとりたい、誰も撮らない一枚をと思っており、このような作品に仕上げようと思ったのは編集段階になってからのため、かなり不自然で不完全な感じがあるが、そこがこの作品の魅力なのではないかと思う。
人間は誰しも表と裏がある。そして人間は完璧ではない。そんな人間らしい匂いのする作品だ。
この作品はいくつかのバリエーションで展示している。それぞれに魅力があり、何かを感じてくれたらとても嬉しい。が、これもまたモデルにあまり好まれない作品なのだろう。私の我儘な感性の押しつけである。
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